阿漕荘の2人
紫子side


美術館デートに何を着ていくか?


彼女にとっては難解な問題だ


止むを得ず、ズカ部のラブちゃんに相談を持ちかけた


ラブちゃんこと東堂 愛は
桜花 櫻子の代わりにズカ部部長になった
友人である


ラブちゃんもまた、かなり個性的な性格をしていると紫子は思っている


そんな、愛の伝道師のような名前を持つラブちゃんに
男と遊びに行くときに何を着れば良いか
相談したところ
渡されたのがこの服だ

何故、ラブちゃんが紫子の背丈に合う服を持っていたのかは
不思議だが



今、問題なのはこの服を着るかどうかだ


上の短いシャツとベストは許容の範囲外だ


しかし、下のフレアのチェックスカート………


ハーバーライトをカモメが通るような状況だ



えっ?意味わからへんの?



ぴーしょろ、ぴーしょろカモメが海渡ってんねんよ
想像力働かせな、あかんで
イメージトレーニングやで



すると紫子は、ふと腕時計を見る
時計の短針は9時を指していた





あー、嘘やろ!!
もうこんな時間かいな!
悩んどる暇なんてないさかいな!

はよ着てしまいんしょ!!

おんなは度胸や!胸張れや、自分!



紫子は急いで
ソファの上の服を着て、軽く化粧を施し
ハンガーに掛かっている紺のロングコートを腕にかけ
ブーツに脚を通して玄関を開けた



「……あーもー、鍵は何処や!
このバック、なんでこんなに家の鍵隠すんやろ、
うちに恨みでもあんのかいな!!
人間様につこーて貰ってるんさかい
もうちっと慎み深くてもいいんよ、なあ


なして毎回、毎回、浜名湖になって鍵探さんといかんねん!」



「血まなこになって、でしょ?」



紫子が玄関先でバックをあさっていると
突如、誰かが彼女に話しかけてきた

紫子は驚き、横を向いた



「うわあ、あなあな、森川くんやないか!?
びっくりしたなあ、あなあな」


「こんにちは、香具山さん
今日は随分と早起きなんだね」


「そうなんや……実は……」


紫子はそう言いかけたが
直ぐにためらった


そういえば、自分は森川とはクリスマスイブ以来、まともな会話をしていない

彼に練無とのデートを言っていいのか
どうかは
悩みどころだ
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