阿漕荘の2人
Where are you two going?おそろいでどちらへ?
紫子side


紫子は鏡の前で悩んでいた

ソファの上の洋服を着るか否かで


短いシャツに短いベスト
赤と黄色のチェックのフレアスカート
そして、膝上までのロングブーツ


まるで、ウェイトレスのようだ
とても動きにくそうで、お世辞にも機能的とは言えない


もし今日、ムスカ大佐が自分を捕まえにきたら、ひとたまりも無いだろう



なぜ、1月の凍える寒さの中で
好んで腕や太ももを露出しなければならないのだろうか?

紫子にはさっぱりわからない
いや、分かるのだが理解したくない



事の発端は、隣に住む小鳥遊 練無が
美術館に行こうと紫子を誘ったことから
始まった


実は昨年の暮れに、自分には人生初となるいわゆる恋人というものが出来たのだ




その恋人と美術館に行く
これは世間一般ではデートと言うのだろう
もちろん、今までも練無とは
主に食事や飲みに出かけてはいた


しかしだ


それはあくまでも、友達としての行為であり
決してデートと言われるような
男女を意識するものではなかった



だからこそ
紫子を悩ませた



今までしてきたようにはいかないのだ

いつもなら
ジーンズに男モノのパーカーを着る紫子だが

デートとなれば、そうはいかない



もしかすると、
練無も密かに自分の格好を楽しみにしているかもしれないだろう
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