Seventh Heaven
第七章 白銀の世界 後
「どうして!わたしの作品、陰が入選しなかったの!」
七咲さん?
「どうして、あの子の作品なんかが入選したの!」
七咲さんは、部屋の中のあらゆるものを壊していく。
わたしの絵に負けた事で、怒りを爆発させている。
それだけ、七咲さんには自信があったんだ。絵だけなら、誰にも負けない自信が。
「わたしが、あの子に!あの子だけには、負けたくなかったのに!」
いや、そうじゃない。
わたしに対する嫉妬?
わたしが入選したから?
どうして、わたしじゃだめなの?
わたしが、紫の世界から逃げているから?
七咲さんを助けるつもりでいたのに、わたしの描いた絵が、彼女を余計に苦しませてしまうなんて。
彼女の描いた作品の題名は、陰。
それは、彼女の心、内面をあらわしたかのような、どこか悲しげな絵だった。
それでも、その色彩感覚はあまりにも素人離れしていて、人を惹きつけるには十分すぎる程の魅力があった。
そんな七咲さんの悲しみや苦しみが晴れる事を祈って、陽と名付けたわたしの作品。
題名こそ七咲さんの作品と対になっているかのように思わせて、素人レベルの作品だ。
わたしが、七咲さんの作品の題名と対になるような題名を付けて、それが少なからず入選のきっかけになったと七咲さんは思っているのだろうか。
「どうして、あいつはいつも、わたしの前に現れて、わたしを苦しめるの」
「許さない」
「わたしは、あいつを絶対に許さない」
「うわあああっ!」
わたしは、絶叫しながら、意識を取り戻した。
視界は、真っ黒。
ここは、世界の裏側?
わたしは、仰向けで横になっている?
眠っていたのか?
わたしの頭は、ひざまくらの上にのってる?
「どうした?」
「え」
目の前には、わたしの顔を覗き込む白髪の少女の顔があった。
「ぎゃあああああっ、変な事されるー!!」
わたしは、とっさに飛び起きる。
「いたっ!」
脳天に走る痛み。
「ぐっ」
同時に、白髪の少女のうめき声。
わたしは飛び起きたその勢いのまま、彼女のあごにヘッドバットをおみまいしてしまったのだ。
「あ、ごめんっ、って、あんた、おかしなことしてないでしょうね!?」
「は?」
「わたしが寝てる間に、へんなことしてないでしょうね!」
「するわけないだろうっ!」
そんなことよりも、今こうしている間にも、七咲さんは苦しんでいるんだ。
わたしの頭に流れ込んできた、あのおぞましいまでの七咲さんの嫉妬の感情。
きっと、あの少年の事もあって、七咲さんは、コンクールでの落選という事実を自分の中で消化できないでいるのだろう。
とにかく、わたしは一刻も早く、紫の世界にいかなくちゃならない。
七咲さんを、そして、真紅たちを助けに。
わたしは、起き上がると、少女の前に立った。
「貴様は、優しい色になりすぎた。それは、諸刃の剣。その優しい色が、彼女達を仲間にした事はたしかに奇跡。しかし、その色では、紫の世界を消滅させられぬ」
少女もまた立ち上がる。
「優しい、色」
「我ら創られた存在に対する情など一切捨てよ。でなければ、あやつを倒す事などできぬぞ」
「情を捨てる?それは、真紅達を見捨てて、紫の子を殺せとでも言うの!」
「そうだ。あやつは、どうやったのか、我ら五人の強さをはるかにこえておる。」
「五人。真紅、緑夢、金華、あなた、そして、もうひとり?」
「そうだ。蒼天の世界で待つ者。この世界において、その世界の主は支配者として、君臨し、最強を誇る。だが、貴様は支配者の限界をも超えられる存在だ」
限界を超える。
緑夢との大食い勝負において、真紅が言って
いた言葉と同じだ。
「紫の世界を支配するあやつは、貴様のように支配者としての限界を超えている。あやつを討たねば、蒼天の世界はおろか、第七の楽園へ辿り着く事はできぬ」
「第七の楽園?」
「そう。全ての起源にして、全ての終焉の地。そこに辿り着く事ができた時、試されるのだ。貴様自身がな」
わたし自身が試される?
「だが、今のそなたでは、第七の楽園へ辿り着く事は不可能だ」
「なぜ?」
「優しすぎる色だからだ。誓え、情を捨てると!淡いその色を、無色とすると!」
「それは悪いことなの?わたしは、情を捨てたりはしない!」
「貴様!」
少女は、わたしを強く睨みつけるが、わたしはひるまない。
「わたしは、信じる。真紅たちが創りものじゃないと!わたしは誓う。誰も傷つけることなく、真紅たちも、紫の子も救って、第七の楽園にたどりついてみせると!」
「甘い。それでは、辿り着けぬ。やはり、貴様では、あやつを倒すのは無理なようだな」
彼女は、深いため息をつく。
そして、鞘、鍔まで全てが白銀に輝く背丈程長い刀を具現化させたのだった。
「どうするつもり」
「貴様が、我に勝ったならば、やりたいようにやらせてやろう。ただし、我が勝ったならば、我に従ってもらうぞ」
「わたしは、絶対に負けない!わたしは、わたしが信じる道をいく!」
七咲さん?
「どうして、あの子の作品なんかが入選したの!」
七咲さんは、部屋の中のあらゆるものを壊していく。
わたしの絵に負けた事で、怒りを爆発させている。
それだけ、七咲さんには自信があったんだ。絵だけなら、誰にも負けない自信が。
「わたしが、あの子に!あの子だけには、負けたくなかったのに!」
いや、そうじゃない。
わたしに対する嫉妬?
わたしが入選したから?
どうして、わたしじゃだめなの?
わたしが、紫の世界から逃げているから?
七咲さんを助けるつもりでいたのに、わたしの描いた絵が、彼女を余計に苦しませてしまうなんて。
彼女の描いた作品の題名は、陰。
それは、彼女の心、内面をあらわしたかのような、どこか悲しげな絵だった。
それでも、その色彩感覚はあまりにも素人離れしていて、人を惹きつけるには十分すぎる程の魅力があった。
そんな七咲さんの悲しみや苦しみが晴れる事を祈って、陽と名付けたわたしの作品。
題名こそ七咲さんの作品と対になっているかのように思わせて、素人レベルの作品だ。
わたしが、七咲さんの作品の題名と対になるような題名を付けて、それが少なからず入選のきっかけになったと七咲さんは思っているのだろうか。
「どうして、あいつはいつも、わたしの前に現れて、わたしを苦しめるの」
「許さない」
「わたしは、あいつを絶対に許さない」
「うわあああっ!」
わたしは、絶叫しながら、意識を取り戻した。
視界は、真っ黒。
ここは、世界の裏側?
わたしは、仰向けで横になっている?
眠っていたのか?
わたしの頭は、ひざまくらの上にのってる?
「どうした?」
「え」
目の前には、わたしの顔を覗き込む白髪の少女の顔があった。
「ぎゃあああああっ、変な事されるー!!」
わたしは、とっさに飛び起きる。
「いたっ!」
脳天に走る痛み。
「ぐっ」
同時に、白髪の少女のうめき声。
わたしは飛び起きたその勢いのまま、彼女のあごにヘッドバットをおみまいしてしまったのだ。
「あ、ごめんっ、って、あんた、おかしなことしてないでしょうね!?」
「は?」
「わたしが寝てる間に、へんなことしてないでしょうね!」
「するわけないだろうっ!」
そんなことよりも、今こうしている間にも、七咲さんは苦しんでいるんだ。
わたしの頭に流れ込んできた、あのおぞましいまでの七咲さんの嫉妬の感情。
きっと、あの少年の事もあって、七咲さんは、コンクールでの落選という事実を自分の中で消化できないでいるのだろう。
とにかく、わたしは一刻も早く、紫の世界にいかなくちゃならない。
七咲さんを、そして、真紅たちを助けに。
わたしは、起き上がると、少女の前に立った。
「貴様は、優しい色になりすぎた。それは、諸刃の剣。その優しい色が、彼女達を仲間にした事はたしかに奇跡。しかし、その色では、紫の世界を消滅させられぬ」
少女もまた立ち上がる。
「優しい、色」
「我ら創られた存在に対する情など一切捨てよ。でなければ、あやつを倒す事などできぬぞ」
「情を捨てる?それは、真紅達を見捨てて、紫の子を殺せとでも言うの!」
「そうだ。あやつは、どうやったのか、我ら五人の強さをはるかにこえておる。」
「五人。真紅、緑夢、金華、あなた、そして、もうひとり?」
「そうだ。蒼天の世界で待つ者。この世界において、その世界の主は支配者として、君臨し、最強を誇る。だが、貴様は支配者の限界をも超えられる存在だ」
限界を超える。
緑夢との大食い勝負において、真紅が言って
いた言葉と同じだ。
「紫の世界を支配するあやつは、貴様のように支配者としての限界を超えている。あやつを討たねば、蒼天の世界はおろか、第七の楽園へ辿り着く事はできぬ」
「第七の楽園?」
「そう。全ての起源にして、全ての終焉の地。そこに辿り着く事ができた時、試されるのだ。貴様自身がな」
わたし自身が試される?
「だが、今のそなたでは、第七の楽園へ辿り着く事は不可能だ」
「なぜ?」
「優しすぎる色だからだ。誓え、情を捨てると!淡いその色を、無色とすると!」
「それは悪いことなの?わたしは、情を捨てたりはしない!」
「貴様!」
少女は、わたしを強く睨みつけるが、わたしはひるまない。
「わたしは、信じる。真紅たちが創りものじゃないと!わたしは誓う。誰も傷つけることなく、真紅たちも、紫の子も救って、第七の楽園にたどりついてみせると!」
「甘い。それでは、辿り着けぬ。やはり、貴様では、あやつを倒すのは無理なようだな」
彼女は、深いため息をつく。
そして、鞘、鍔まで全てが白銀に輝く背丈程長い刀を具現化させたのだった。
「どうするつもり」
「貴様が、我に勝ったならば、やりたいようにやらせてやろう。ただし、我が勝ったならば、我に従ってもらうぞ」
「わたしは、絶対に負けない!わたしは、わたしが信じる道をいく!」