【完】俺の言うこと聞けよ。〜イジワルな彼と秘密の同居〜

そう尋ねる顔は、やっぱりどこか切なそうだった。


急に心臓がドキドキしてくる。



だけど、そう言われて考えてみたときに、ふと思い出したことがあった。


前に琉衣くんとショッピングモールに行った時。


カフェで琉衣くんがつぶやいたこと。



”俺は辞めた奴のことは忘れんだよ”



その時の彼の表情がすごく印象的だったこと。



だけどまさかそれを沙良さんに言えるわけがなくて…

何もない、なんて言ってしまった。



「そっか…そうだね。

話すわけないよね、琉衣が」



沙良さんは悲しそうにそう呟く。



だけどそれを見たらどうしても、気になってしまった。


いや、無性に知りたくなって。


これはもしかしてチャンスなんじゃないかって。


琉衣くんと沙良さんの関係を、知るチャンス。



だから私はうっかり尋ねてしまった。


あんなに聞くのが怖かったくせに。



「あのー…、

ずっと思ってたんですけど…

琉衣くんと…昔何かあったんですか?」


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