指先からはじまるSweet Magic
その横目に、席から立った私が映ってしまったのか。
長谷さんが何気なくこっちに目を向けて、思いっ切り二人を見ていた私とバチッと目が合ってしまう。
途端にものすごく気まずそうに逸らされて、私は二人から視線を背けると黙って肩を竦めた。


……あれから、何度かランチに誘われた。
それをのらりくらりとかわして断り続けたら、今度は、夜、飲みに行こうと誘われた。


市川君にも言われたことだし、私はそのタイミングできっぱりと断った。
曖昧な態度を続けたら、長谷さんにも失礼だ。
そして何より……。
私は絶対に、長谷さんに恋をすることなんてないだろうと、ちゃんとわかってしまったから。


その翌日から愛ちゃんにアプローチを始めた変わり身の早さにはちょっとムッとしたし、大いに呆れはしたけれど。


これで二人が幸せになれるのなら、それは私だって祝福したい。


そのまま二人には目もくれずに、私はオフィスを出てエレベーターホールに向かった。
下向きの三角ボタンを押して待っている時、バッグの中で携帯がブブッとバイブ音を鳴らした。


手に取ってスリープ状態を解除すると、香織からのLINEメッセージが届いていた。
私が午前中に送ったメッセージに対する短い返信。


『OK。今日六時に東京駅で』


そのメッセージに指先だけでメッセージを作って、そのまま直ぐに返信する。
返って来たのは可愛らしいキャラクタースタンプだった。


香織らしいキャラクターに、思わず苦笑が漏れてしまう。
タイミングよく到着したエレベーターに乗り込んで、私は、少し暑さも和らいだ都会の街に繰り出した。
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