本当のわたし
あれからちょっと経って、彼方と約束した通り、久しぶりに地元に帰ってきた。

玄関の扉を開ける事がこんなに緊張したのは初めてだった。

ウロウロしていたら通行人に変な目で見られたうえに通報されそうだったので意を決して扉を開けた。

「ただいま。」

「お兄ちゃんー!!!」

俺の声を聞いて彼方は元気にいっぱいに走ってきて、もはやお決まりのように飛びついてきた。

「「おかえり。」」

優しい声で梨花さんと太一さんは迎え入れてくれた。

一人暮らしをし始めてからちゃんと帰ってきたのはこれが初めてかもしれない。何か用事があって来ることはあっても泊まらず必ず家に帰っていたから。

久しぶりに入ったほぼ使っていない自分の部屋。梨花さん達に引き取られて一人暮らしをする中3までの間しか使っていないから1年も使っていない。

ほぼ真新しい部屋。

引っ越しする時にほとんどの物を今の家に持っていったからここにはほぼ何もない。

それでもこの部屋をなくさずちゃんとそのままにしておいたのは太一さんの愛情だと思う。

「優希が出て行ってからずっとそのままだったから悪いとは思ったんだけど、少し掃除をしたんだけど大丈夫だった…?」

「大丈夫だよ、ありがとう」

少しぎこちなさそうに話す梨花さん。
梨花さんと俺にできた溝はそう簡単には埋まらない。でも焦る必要はない。

「お兄ちゃんー!一緒に遊ぼう!」

彼方は俺を引っ張っていく。
梨花さんはちゃんと俺と彼方を愛してくれてる。だから俺もちゃんとそれに応えなきゃいけないんだ。

「いいよ!」
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