お隣さんと内緒の恋話
車の中で葵と話していると、雅が彩香の話を始めた。
「 彩香さぁ…」
「 彩香さん?ペットショップの… 」
「 葛西の姉さんで、最近 父親が入院して、母親はだいぶまえに病気でな… 」
葛西くん、お父さんが入院してたんだ…
お母さんが亡くなってるのは知ってたけど。
「 ここだけの話だけと、最近 葛西の素行が悪くてな、それで彩香が俺に相談してるってわけ 」
葛西くん…
そっか、素行が悪いのって もしかしたら 気持ちのやり場がないのかな…
さっきも 小遣いがないって言ってたし。
「 雅くん、彩香さんの力になってあげてね 」
「 ああ、任せなさい 」
ミラー越しに微笑む雅に、私も笑みを見せた。
「 …何の力にだろうな?」
え… どういう意味?
「 葵~ いくら俺でも 自分の生徒の身内に手は出さないよ 」
「 じゃあ、いつ手出したの?」
ふいに聞いてしまった私はミラーを見つめた。
目が どことなく泳ぐ雅。
「 いい大人が嘘つくな、恥ずかしい!」
葵… キツいね。
「 葵~ 兄貴をイジメんなって~ 彩香とは何もないよ、今夜もね 」
どうだかね。約束 守るのは無理だろうな…
自宅付近に来て、雅の携帯が鳴ったが 自宅前の駐車場に止めて電話をかける雅を置いて 私と葵は車から出る。
「 椿、ちょっと兄貴と話してから行くよ。ゆっくりして待ってて 」
「 わかった、待ってる 」
私は先に自宅に帰った。