【完】幼なじみのあいつ ~亮平の恋愛編~
「あなた、大丈夫?」
「……大丈夫、ではないです」
そう俺は今、何故か腹の上に女を乗っけている。
何でこうなった?
あぁ、そうだ。
俺は腕を引っ張られ、地面に転がされたんだった。
この女に…。
自分でやったにも関わらず、何故大丈夫かと聞いてくるのが疑問だが---
「大丈夫…、そうね」
「………」
心配そうな声色で聞く、その女の真意が分からない。
見た目、おかしな人間ではないようだ。
俺のような学生とは無縁の赤スーツがよく似合う、綺麗な大人の女性だった。
ショートカットの髪に切れ長の瞳、そして整った顔立ちのその女は仕事の出来る女とはこんな感じなんだろうなと連想させる。
これぞいい女の代表だな…と、心の中で呟いた。
「…貴方、自殺は良くないわよ?何があったかは知らないけど、人生いい事ばかりじゃないの。悩み事があるのなら聞いてあげるわ」
あぁ、なるほど。
橋の上で身を乗り出していた俺は、傍目からはまるで自殺志願者のように見えたのだろうと納得する。
「取りあえず、まずはどいてもらえますか?」
「………いいけど」
目の前のこの人はまた俺が自殺するんじゃないかと思っているらしく、訝しげに見ながらも俺からどいてくれた。
身体から重みが消える。
立ち上がりながら、自分の尻や身体を叩いてホコリを払う。
そして目の前の女を見た。