ツレない彼の愛し方【番外編追加】


「でね、姉ちゃんとなんかおかしいって気が付いて…ま、気が付いたのは最近なんだけど、僕も少し調べた訳よ。」


兄さんが胸ポケットからスマホを取り出す。
メモ代わりに使っていたのだろう、すらすらと何かを読み上げる。



「綾乃とは仕事上で一緒に食事には行ってただろ?その時、酔ってしなだれかかって来た綾乃を受け止めた写真や、スタッフを交えて食事をしながら笑談してた時、綾乃さんと隣に座っていたらトリミングされてツーショット写真に仕立て上げられた。それが週刊誌に載ったんだよな?」



「・・・はい。」

その週刊誌の話題はネットで取り上げられて噂が広がっていた。自分の知らないところで予期せぬことが次々と起っていた。断ろうにもクライアントでもあり、父の古くからの友人のお嬢さんでもあるから邪見にできない。それでもプライベートは別と突き放した途端、ありもしないネタを突き出して来た。




「その後、隆之介の会社のスタッフが婚約者の綾乃から隆之介を奪う悪女という設定で面白おかしく書かれた記事をでっちあげられたな?『略奪愛?早瀬隆之介を奪う女性スタッフ』なんて見出しでご丁寧にその彼女の目隠し写真までつけて」



「なんでそれを…」

兄さんはほくそ笑んで言う。

「僕の人脈を知ってるだろ!?」



そうだ、綾乃と婚約なんてしていないのに、一人歩きした噂がまた上乗せされ、今度は響にまで被害が及びそうになった。それだけはダメだ。響が好奇の目にさらされるなんて絶対にダメだ。


それを阻止しようとすればするほど、がんじがらめになっていた。
ゾッとした。
綾乃の自分に執着する姿が恐ろしかった。どうして今になって自分なのか?


確かに…
同僚だった時代、身体の関係はあった。
けれど付き合ってはいない。独立した後は自然と離れてしまった。
しかし仕事で再会し、プレオープンのパーティから妙な執着心でまとわりついて来ていた。



「あのお嬢ちゃんは一癖も二癖もあった訳だ」

兄さんは全部わかってると言いたげに頷いた。
そして父さんに向き直る。
兄さんの話でまた何かやらかしてしまったかもという不安げな顔。



「親父はさ…昔から仕事は完璧でも俺たちの事になるとどう言うわけか、的外れな行動ばかりしてきただろう?だから綾乃の事を何もしらないのに、隆(りゅう)にふさわしいとかズレた考えで勝手にお見合いなんてさせたんでしょ?隆もその気がないなら断ればいいのに、親父に遠慮してお見合いなんてするから、綾乃の良いようにされて。もう一回聞くけど、綾乃と結婚する気なの?」



「結婚はしません!今、いろいろと断る方向で動いています。」



「ふ~ん・・・でもこの騒ぎ、どうするの?手に負えてないんじゃないの?」



「それは・・・」



「朽木に迷惑かかるとか、親父の顔に泥を塗るとか余計なことを考えてるんでしょ?」



「兄さん」



「なんで俺たちに相談しないかな~。一人で抱え込んで。姉貴だって待ったんだぜ。お前がいつ俺たちに相談してくるか。あまりにも遅いから…」



「すみません、でも・・・」



「でもじゃないよ、朽木の株主に申し訳ないとか、いろいろと考えちゃってるわけ?俺たちからしたら、弟の幸せが一番なんだけど。」



「えっ?」


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