ツレない彼の愛し方【番外編追加】
「何してる?」
と背後からいつも以上に低い声が聞こえた。
一足先に到着していた早瀬だ。
「いや、響が珍しい服装だから、みんなでイジってた。」
「永野さん!!!!」
永野さんの意地悪な言葉で社長が私を頭から足の先まで目線を移し、一瞬、眉間にシワを寄せた。
また頭まで戻って来た。
「馬子にも衣装だな。」とひと言。
「ぶはっ!」
岡野は呑んでいたシャンパンを吹き出す。
美咲ちゃんは「そんな事ないです!」と早瀬を睨む。
由加里さんは「バカ!」と早瀬の腕を叩いていた。
「もう、やだ。」
慣れない服装と慣れない靴、慣れない場所でテンションが下がってるのに、追い打ちをかけるなんて早瀬が憎たらしい。
「私、化粧室に行って来ます!」
私は恥ずかしくさと哀しさが同時に押し寄せてくる。
お世辞くらい言ってくれてもいいのに!
化粧室に向かってると慣れないヒールでつまずく。
「あっ!」
転んじゃうと言う瞬間に腕を掴まれ、私はなんとか体制を保った。
「ったく、危なっかしいな。」
「ありがとうございます。」
早瀬はすぐに私の腕を離し、私の耳元に唇を寄せ
「そんな露出が高い服なんて着て。ったく!」
とだけ言ってすっと去って行った。
「えっ?」
私はみるみるうちに頬が熱くなるのを感じ、足早に化粧室へと向かった。
パウダールームには女性客が数人。
みんな念入りに身支度を整えている。
頬がまだ赤い…
早瀬の何でもない言葉が私を自惚れさせる。鏡に映ってる自分が自分じゃないような感覚。
とりあえず、口紅でも直しておこう。
「進藤さん?」