ツレない彼の愛し方【番外編追加】
咄嗟に名前を呼ばれて振り向くと、まるでおとぎ話から出て来たようにキラキラした女性が立っていた。
「はい?」
「お久しぶり。吉澤綾乃です。」
「あ…吉澤さん?えっ?吉澤コーポレーションの吉澤さんって…」
確かこのレストランの担当は男性だったはず。
それがどうして…
私が大学の頃のバイトしていた広告代理店にいたあの吉澤さんがなぜココに?
「隆之介から進藤さんのことは聞いてたのよ。優秀な人材を会社から引っ張って行っちゃったからみんなガッカリしたんだから」
隆之介…って呼んでいる。
そうだった…広告代理店にいた頃、いつも早瀬の近くにいた女性。
元カノという噂もあったけれど、本当の事は知らない。
「私はバイトでしたし、たいした仕事もしていませんでした」
「あら、そう?あなた人気があったのよ。バイトの中でも仕事ができて美人で。だから隆之介も連れて行きたかったのね」
年上の余裕で私に微笑む。
「あの…どうして吉澤さんがここに?」
「あ、ごめんなさい。改めまして…」
差し出された名刺には「吉澤コーポレーション レストラン パフューム 担当 吉澤綾乃」と記載されていた。
「えっ?」
「このレストランの担当をしています」
「あ・・・すみません、私の勉強不足で」
「いいのよ、つい先日まで担当は違う人間だし…ちょっとワガママ言って、私に交代したの」
ワガママで担当を交代って?
ついさっき、早瀬の言葉で暖かくなっていた胸がチクチクと痛み出す。
足がじんじんと痛い。なんだろう、この嫌な感じ。
私が何も返す言葉がないままでいると、秘書らしき女性が綾乃さんに近づいて来た。
「もう時間だから私はこれで...またゆっくりとお話しましょ。隆之介も一緒に…今日は楽しんで行って下さいね。」
と、パウダールームから出て行った。私は鏡の前で立ち尽くしていた。
大人でキレイな人。