かぐやの月
かぐやは大飛鳥にまたがり、全身の感覚を研ぎ澄ませていた。
雷を宿す大剣を操る銀司がもし戦っているのなら、その気配を拾えるはず。
しかし、一向に気配を拾えない。
羅門の言葉が引っかかり気だけあせる。
(銀ちゃん、無事でいて)
心の中でそう何度も願う。
もし、何かあったらと思うだけで大飛鳥の手綱を握る手が震える。
「黒居!確かにこの方面であってるの?」
「間違いないです。近いはずなのに静かすぎる」
感知能力の高い黒居の先導を今は信じるほかはない。
その時ピューっと指笛が鳴り響いた。
大地から石つぶてが雹のごとく降ってきた。
幸い、指笛で明星の里守が危険を警告してくれたおかげで回避することができた。
大飛鳥に当たっったら体を打ち抜かれ地面に落下してしまっていただろう。
指笛は谷間から響いた。
そこに銀司たちがいるに違いない。
と思ったが早いか、稲光が走った。
間違いない、銀司だ。
生きている!
それ以上石つぶてが飛んでくることもなく地面に降り立つと、土まみれの銀司たちの周りに子供のような背丈ではあるが、大きな鉤鼻を持ち深くシワの刻まれた顔を持つ種族がバタバタと倒れていた。
「うおぉぉお」