かぐやの月




「かぐや?!」


かぐやが目を開けるとそこには銀司と白虎と鞍馬がいた。


自分が具合を悪くして倒れたことを薄っすら思い出した。


「泣いているのかい?」


白虎がかぐやにそっと尋ねた。


「両親に会ったの。私の両親に」


白虎がかぐやの涙をぬぐおうと手を伸ばし、


思い直して引っ込めた。


かわりに銀司がかぐやの頭を撫でてやっている。


銀司ならかぐやの気持ちが収まるまでそうし続けてやるだろう。


白虎はいつの頃からか、


かぐやに触れなくなった。


もしかぐやに触れたら抱きしめてしまいそうだから。


かぐやへの思いを抑えられないかもしれないから。


白虎はかぐやと銀司が幸せならそれでいいと思っている。


大切な人ができたら、死を恐れてしまう。


里守の任務に支障をきたすかもしれない。


だが、銀司は白虎のように人を好きになるのに余計なことを考えない。


好きなものは好き。


単純な人間だ。




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