擦り切れてしまった女性の場合
 部屋の隅に置かれている姿鏡には、私ではない私が映し出されていた。
 メイクを決め、露出の高い派手な服に身を包んだ私。
 見た目だけならこれで完璧なのだろうが、鏡に映る私の目は、死んだ魚のような光の射さない瞳。

 目を閉じて三つ数える。
 そのままで両方の頬を両手で叩く。
 よし。

 今日も行ってきます。

 誰も返事をしてくれないから、声には出さない。

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