死に至る病
 悲鳴は出なかった。


 涙も出なかった。


 ただ、漠然としていた。


 父は、面影が全く無いほどの姿かたちで、やはり肌が焼いたパイ生地のような質感で、色が真っ白で。


 すごく乾いてそこにいた。


 疑問だらけだった。


 なんで? どうして?


 あ、お母さんは。


 私は台所に行く。


 母は、胸を押さえたまま、こちらを見ていた。


「お、お母さん?」


「ゆ、優。おか、えり。おねが、い、きゅうきゅう、シャ……」


 母はそれだけ言うので精一杯だった。


 母は、その言葉を吐いた口の形のまま硬直し、それから乾いた。


 パサパサと崩れ床に落ちていく、母の顔の皮膚。


 骨も肉も、何も分からない。


 私はその場に座りこんだ。


 全然、意味が分からない。


 病気?


 なんなの、これ?


 私は静かに、静かに、感情が壊れていくのを感じた。


 悲しみは後から来た。


「お、おかあさん! おかあさん!」


 私は泣いた。


 どうしたらいいのか、本当に分からなかった。


 私は、しばらくそうして、それから。


 携帯電話が鳴ったのに気づいた。
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