禁断のプロポーズ
 

 あれは親切だったのだろうかな、と思いながら、未咲が洗面所に行こうとしたとき、また出くわした克己が手招きをした。

 周りを見回し、私ですか? と自分を指差すと、克己は頷き、再び、手招きをする。

 近寄っていくと、
「訓練中の犬を呼ぶみたいだな……」
と呟かれた。

「今日ならいいよ」
と突然、克己は言い出した。

「え?」

「さっき、ちょうど、愛……

 二課の子たちとコンパしたいってやつが居たんだ」

 今、愛人課の子って言おうとしましたね……と横目に睨む。

 が、無視された。

「それが、今日じゃなかったら、しばらく都合つかないみたいで。

 君に恩を売っとくのも悪くないかと思ってね」

 秘書課で少しは肩身の狭い思いをしなくてよくなるだろう? と言う。

 一瞬、専務室での会話を聞いていたのかと思い、どきりとしてしまったが、顔には出さなかった。

「はい、ありがとうございます」
と素直に礼を言ったのに、克己は、

「それにしても、よく専務は君みたいなの、飼ってるね」
と毒を吐き始める。

「それ、大きな声で言わないで欲しいんですが。

 あと、人を犬か虫みたいに言われないでくださいよ」

「虫ねえ。

 カブトムシほどには高くなさそうだけど」

 ほんっとうに毒舌だな、この人、と思っていると、水沢は、

「灰原は今日は暇らしいよ」
と言ってきた。

「えっ」
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