禁断のプロポーズ
 



 そういや、初給料でみんなに奢ろうと思ってたのにな。

 五十万の衝撃で吹き飛んでしまった。

 専務室を一人出ると、ちょうど佐々木と智久が話しながら戻ってくるところだった。

 ちらと上目遣いに窺う。

 一応、『あしながおじさん』の智久にも初給料でご馳走しようと思ってたのに。

 いろいろ思いながら、こちらに来る智久を見つめていると、佐々木と目が合った。

 そうだ。

 此処では、専務だ、専務。

 自分にそう言い聞かし、未咲は事務的に二人に頭を下げた。

 そのまま、行こうとすると、
「未咲」
と智久が呼びかけてくる。

 えっ? と振り返った。

 佐々木さんが居るのに、と思ったからだ。

 だが、しかし、ぼちぼち若いのに常に沈着冷静な佐々木は、まるで表情を変えずに控えていた。

 秘書の鏡だ。

「……なんですか」
と未咲もまた、佐々木の前だと言うのに、機嫌悪く訊き返してしまう。

「お前、今日は帰ってこい」

 さすがだ。

 次々と飛び出す智久の爆弾発言にも、佐々木は顔色を変えない。
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