禁断のプロポーズ
 


「ただいま帰りましたー」

 未咲がガラガラと玄関を開けると、仁王立ちになって、夏目が待っていた。

「……お帰り」

「ただいまです」
と靴を脱ぎながら言う。

「またコンパか」

「違いますよ。
 今日は遅くなるってメールしといたじゃないですか」

「また頭から水をかけてやろうか」

「あれ、台所で水に顔突っ込まれただけですよ」

 だけって言うのもどうだかな、と思いながら、
「今日は水沢さんも連れて帰ってませんよー」
と言い訳のように言い、そこに腰掛けると、今脱いだばかりの靴の上に、足を置いて、ふーっとため息をついた。

「夏目さん、私と離婚してください」

 一呼吸置いて、夏目が言う。

「まだ結婚してないから無理だろう」

 酔ってんのか? と問われ、

「そんなに酔ってません」
と言い、そのまま床に仰向けになった。

 自分を見下ろす夏目の顔が真正面に見える。

「じゃあ、結婚してください」

「最初に会ったとき、言われたな、それ」

 どうかしたのか? と夏目は溜息をついて、そこにしゃがんだ。

 いや、昨日からどうかしっ放しですよ、と思いながら、未咲は立ち上がる。

「お風呂入ってきます」
と言うと、鞄も投げたまま、浴室へと向かった。
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