禁断のプロポーズ
よかった。
お湯、まだ抜かれてなかった。
台所と同じ配色のタイル貼りの風呂だ。
湯船に身体を沈めると、意外に冷えていたのか、身体中の血が温まって流れ出すような感覚があった。
智久の家であったことを思い返していると、いきなりすりガラスが開く。
「入ってますっ」
と思わず、トイレに居るかのようなことを叫ぶと、身体を隠すように身を縮める。
風呂の縁に両手でしがみついたが、夏目は真面目な顔で入り口に立ったままだった。
「な、なんですか?」
「未咲、浮気してきたわけじゃないんだよな」
「そんなわけないじゃないですか」
「何処に行ってた」
「……智……専務のうちです」
智久さんと言いかけやめる。
桜に智久を名前で呼んで、激怒されかけたのを思い出したからだ。
「ちょっと話があると言われてーー」
「そうか。
素直に白状したのはいいことだな」
なんだか先生に叱られてるみたいだな、と思った。