禁断のプロポーズ
 真実に近づくための、第一歩。

 いや、違うか。

 あの会社に入ったときが、本当の第一歩だった。

 ソファに手をかけ、気合を入れて立ち上がる。

 一度、起きると、社内に居るときのように、しゃっきり立てた。

 冷蔵庫を開けてみたが、買ってもいない栄養ドリンクがあるはずもない。

 仕方なく、ハチミツドリンクなど飲んでみたが、効果があるかどうか。

 グラスをシンクに勢いよく置くと、
「よしっ」
と言って、洗面所に向かう。

 うっかりだが、結婚してくださいと言ってしまった相手と出会うのだ。

 化粧直しくらいしなければ。

 鏡に映るのは、自分ではあまり姉と似ているとは思えない顔。

 そっと冷たい鏡面に触れてみる。

 これが真実に近づくための、第一歩。

 このときは、そう思っていたが、後から考えれば、それは、夏目との奇妙な同居生活の第一歩だった。
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