禁断のプロポーズ
「地位は失うかもね。

 遠崎夏目が次期社長になれば」

 子会社に役員として、出向させられるかも、と言う。

「そんなこともないと思いますが」

「遠崎が望まなくても、周りがきっとお膳立てするわ」

「万が一、そんなことになっても、と……専務なら、また、這い上がってきますよ」

「信頼してるのね」

「まあ、一応。
 切れ者だし、ああ見えて、意外に情があるし、部下がついてこないこともないと思います」

 今、佐々木を見ていても、そう思う。

「でも、気を抜いたら、後ろから斬りつけられそう、とは思うんですけどね」

「ねえ……ほんとに専務のこと信用してるの?」
と不安げに桜が言ってくる。

「いや、未咲ちゃんらしいよね」
と克己は笑っていた、

「信用してないわけじゃないけど、後ろから斬られたときの準備も怠らないっていう。

 だから、ぱっと見、忠実な子犬みたいなのに、なにかこう、胡乱なところがあって、ミステリアスというか。

 でも、その専務以上の用心深さ。

 君が一番、社長に向いてるかもね」

 冗談で言ったのだろうが、昨日の話を思い出し、ぎくりとしていた。
< 285 / 433 >

この作品をシェア

pagetop