禁断のプロポーズ
智久が十時少し前にあの部屋の前に行くと、未咲がドアの前にしゃがんで、なにか読んでいた。
一瞬、あの日記に見えたが、違ったようだった。
顔を上げ、
「お帰りなさい」
と言う。
「遅くなって悪かったな」
と言いながら、鍵を開けると、未咲は驚いたように笑った。
「どうしたんですか、謝ってみたりして」
つくづく失礼な女だ。
「まあ、入れ」
「お邪魔しますー」
とついて入ってくる未咲に、
「なに読んでたんだ?」
と問うと、未咲は手にしていたものを振って見せ、
「私の日記ですよ」
と言う。
「お前、日記を書くのか!?」
「ほんと失礼ですね〜、この人は」
未咲は自分が彼女に対して抱いているのと同じ感想を自分に対して抱いているようだった。
未咲と自分は正反対に見えて、似ている。
だから、今までうまくやって来れたのだろう、と思った。
「確かに、たまにしか書いてないですよ。
なにか会った日だけ。
だからこそ、わかりやすいんです」
そう未咲は言った。
後継者を狙うなら、夏目より、誰より、こいつを警戒すべきだったかな、と最近は思う。