禁断のプロポーズ
 



 ガラスの向こうで、佐々木となにやら楽しげに話している未咲を見ながら、今度はなにを企んでるんだ、と智久は思った。

 未咲は忘れ物なんてしていない。

 几帳面な自分があまり物のない部屋を徹底的に片付けて帰っている。

 忘れ物などないと、自分が知っていることもわかっているはずなのに。

 もしも、調べて兄妹だったら、夏目と海外に行くとか言っていたが、なにもかも知っている俺を殺して終わりにする気なんじゃないだろうな。

 やりかねん、と思っていた。

 お前が殺る気なら、殺られる前に殺るぞ、と思っていると、未咲がこちらを振り向き、へらりと笑った。

 緊張感のない顔だ。

 みんな、あれにやられてしまうのだろう。

 夏目も桜も、克己も。

 そして、恐らく、自分も、普段は周りに張り巡らせている垣根を、つい、彼女の前では取り払ってしまう。

 あれが一番危険な相手だと知っているのに。

「まあいい。
 そろそろ幕引きの頃だしな」
と呟き、智久は足許に置いている、佐々木にも触らせない鞄を見た。
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