禁断のプロポーズ
「そんなこともないと思いますが。

 っていうか、まだ警察の人が居るのに、その話は……」

 ちらと奥を気にしながら、未咲は言った。

 鑑識の仕事は終わったようだったが、まだ撤収中なので、中には入れず、二人で、玄関の壁にすがって待っていた。

「殺し屋、今、どうしてるんだ。

 お前の許を出たあと、もう一度、会ったんだろう?」

 お前の初めての相手はそいつか、と言われる。

「初めての、なんですか?
 キス?」

「……すっとぼけるな」

「言わなかったですか。

 夏目さんが初めてですよ。

 あとは全部跳ね除けたんですから」

「全部ねえ」

 ……もうこの話題はよそう。

 ろくでもない展開になりそうだ。

 しかし、どうして男というのは、過去を追求したがるのか。

 私は、夏目さんの過去なんて、知りたくないのに。

 例えば、おねえちゃんとなにかあったとしても、聞きたくない。

 おねえちゃんの死の真相を探るという理由がないのなら、なんにも追求したくなかった。

 まあ、そしたら、私は、今、此処には居ないわけだけど――。

「思ったんですが」
と話題を変えるように未咲は言った。

「実は、スクラッチの五十万を狙った泥棒では」
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