禁断のプロポーズ
「すっごく困ってるときに現れて、お金も貸してくれて、養父母の会社を立て直してくれて。

 私がこれ以上、養父母に迷惑かけたくないと思ってたら、部屋まで貸してくれたんですよ。

 しかも、びっくりするような綺麗な顔で、いきなり――」

 しまった。

 あやうく、キスされた、まで言うところだった、と思った。

「ま、普通なら、智久さんを好きになりますよ。

 だって、救いに来てくれた王子様みたいじゃないですか。

 かなり、凶悪ですけど。

 でも、そのとき、好きにならなかったんですよ。

 今更、なるわけもありません。

 智久さんは、なんか違うんですよ。

 もう家族みたいって言うか」

「向こうも、そう思ってりゃいいがな」

 男と女では受け取り方が違うから、と夏目は言う。

 ぎくりとしていた。

 冗談だろうが、夏目と兄妹だったら、俺と結婚しろと言われたことを思い出したからだ。

 いや、ほんとに……冗談だろうが。

「智久と出会った頃、お前、その、腹に傷を受けた殺し屋のことがまだ好きだったから、ときめかなかっただけじゃないのか?」
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