禁断のプロポーズ
 



 タクシーに乗った夏目は、行き先に自宅を告げる。

「あれっ?
 会社に行くんですよね」
と未咲が言うと、

「ちょっと取ってくるものがあるんだ」
と言う。

 夏目は、そのまま、黙って腕を組み、背もたれにすがって、外を見ている。

 なにか機嫌が悪いような。

 気のせい?
と思っている間に、家に着いた。

 家の中は、鑑識のつけた粉が残っている以外は、変わりなかったが、夏目は一応、用心のためにと一周確認をする。

 ずっと未咲の手を引き歩いていたのだが、未咲の部屋の前まで戻って来た夏目は唐突に、
「入れ」
と言った。

 なんだかわからない迫力に、
「は、はいっ」
と従うと、後からついて入った夏目は障子を閉め、

「そこに座れ」
と言う。

「はいっ」
と未咲は畳の上に畏った。

 なんだろう。

 なに怒ってるのかな。

 袈裟懸けに斬られるか、腹を斬られるか。

 さっきの智久の武士発言が尾を引いて、そんなことを思ってしまう。
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