禁断のプロポーズ
 巻き髪の派手な美女で、小洒落たスプリングコートを羽織っている。

 自分を見て、にこっ、と微笑む。

 ……社員じゃないけど、いつか見たことがあるような、と思いながら、頭を下げた。

 そのまま、一緒にエレベーターに乗り込む。

「一階ですか?」
と問うと、ええ、と言う。

 夏目は、彼の部署がある隣のビルに行ったのだが。

 もう下に来てるだろうか、と思いながら、ボタンを押す。

 背後から、灰原のような大人の香りがした。

「貴女、志貴島未咲さんよね?」

 唐突に女はそう訊いてきた。

「はい。
 あ、えーと……こんばんは」

 しまった。

 名前が思い出せないとバレただろうか、と苦笑いしていると、彼女は言った。

「ねえ、貴女、それ、本名?」
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