禁断のプロポーズ
「水沢さんは、やっぱり、出世とかこだわる派なんでしょうね。

 課長はこだわらなさそうですね」

「俺は仕事ができれば、それでいい。

 どんな部署でも、どんな役職でも。

 好きなんだ。
 ただ、黙々と仕事するのが」

 ……そんな感じですね。

 こういう上司ばかりだと助かるのだが、と思っていた。

「でも、似てないようで、似てますね」
と言うと、

「誰とだ」
と言われる。

「広瀬専務ですよ。

 あの人も、実は、仕事してれば、楽しい、みたいな感じですよね」

 家庭人にはなれそうにもないですが、と言うと、夏目は目を上げ、
「俺は家事もするぞ」
と言ってくる。

「そうですね。

 美味しいですよ、この春野菜の炒め物。
 なんか癖になる感じです」
と言いながら、夏目の料理を摘んだ。

「お前、俺にプロポーズしたのは、好きだったからじゃないようだが。

 俺と専務なら、どっちが好きだ」

「なんですか、突然。

 そして、そこに、広瀬専務が加わるわけがわかりませんが」
と言ってみたが、夏目は無言でこちらを見ている。
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