禁断のプロポーズ
 


「桜さん、私、結婚するかもしれません」

 朝のパウダールーム。
 人気がなくなったのを確認し、未咲は桜にだけ、そう言ってみた。

 急にまたこの女、なにを言いだした、という顔で桜が見る。

「なんで結婚?
 まさか、遠崎と?」

「今朝、課長とキスしちゃったんですよ」

「……ちょっと待って。
 それだけで?

 あんた、もしかして、初めて?」
と訊くのも困るかのような顔で訊いてくる。

「いや、まさか」
と未咲は苦笑いした。

 あれは人生三度目のキスだ。

 だけど……

 あれが一度目なら良かったと少し思っている。

 たぶん、ときめいたのは、あのときだけだったから。
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