空っぽのイヤホン(仮)
「びっ…くりしたぁ…。
心以外に人いたのかよ…。」

そんなに影薄いですか…?

私の思ってることを察したのか、五十嵐がヘラヘラと笑いながら否定する。

「違うよ、影薄いとかじゃなくて。
こいつ昔事故って右目の視力ないんだよね。」

だから見えなかったんだと思う。と言われてなんだか申し訳なくなった。

「あ、あの…。」

「ああ、俺は萩野諒(はぎのりょう)だ。」

「白井美紀子、です。」

「美紀子、悪いけど心は教室かえるから。」

くるりと振り返って五十嵐の手を掴もうとする萩野くん。

でも五十嵐は、それをパッとかわして
「ヤダ」と一言。

子供みたいな言い方に、少し笑そうになった。
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