空っぽのイヤホン(仮)
「なんで名前、知ってるんですか?」

「いや、たまたま…?」

苦しすぎる言い訳に、当たり前だけど疑いの目を向ける聖奈さん。

美少女の不機嫌って…迫力満点だ。

「まあ、いいです、それは。
…で?別れてくれますか?」

「それなんだけど…」

即座に誤解を解こうとして、動きを止めた。

言っていいのかな?
五十嵐がなんであんな嘘ついたのかわからないけど、あの嘘は萩野くんにというより、聖奈さんについたものな気がする。

それを、私がバラしてもいいの?

「それ、は、私1人じゃ何とも…。」

しどろもどろな私に聖奈さんは思いっきり溜息をついた。

「そうですね。
…でも私、心とは話せないので。
あなたに頼むことしかできないんです。」

「え…どういう…」

こと、と続ける前に
聖奈さんは何か考えるような面持ちでくるりと背中を向けてしまった。

そのままスタスタと去って行ってしまう。
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