冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
 
 リューリは、救護院を運営するシスター達の話しに耳を
 かたむけ、施設内を見学し、ひとりひとりに声をかけた。

 涙をながして喜ぶ者もいるが、暗い目をむけられるか、
 憎しみをぶつけられることもある。

 

 救護院の訪問が終わると、リューリはいつもぐったりと疲れた。

 痛む頭に手をやりながら救護院を出ると、リューリはいつも
 運河沿いを歩く。

 冷たい風の中に身を置いていると、すこしは痛みがやわらぐような
 気がした。



 寒さで人気のない運河沿いをしばらく歩いて、リューリは目下に
 ある小さな水路に目をとめた。

 そこに屋根付きの小舟が止まっていたからだ。

 こんな冬の次期にめずらしいと、ぼんやりその舟をみていて
 リューリははっとした。

 屋根付き舟から、一瞬だけ顔をのぞかせた男。

 男の頬には傷あとがあった。

 あのときリューリを襲った男達の親分格だった男だ。



 男は、不法取引をしていた者達の仲間だ。

 男について探れば、なにかわかることがあるはず。


 
 リューリは共についていたものをよぶと事情を話した。



   「あの男の後をつけてわかったことを知らせてちょうだい。」

   「わかりました。リューリ様。」
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