キャラメルに恋して
「2名様でよろしいてすね?」
表情一つ崩さずに、笑いもしないで私達を見ている野口さ……、じゃなくて座敷わらしさん。
「はいっ!」
「はい……」
ワクワクが止まらなくて、ちょっと恥ずかしくなるくらい元気に返事をした私とは違い、小さな声の隼人。
「では、心臓に気を付けてー」
そういって、座敷わらしさんは口角を少しあげた。
どうやら一応笑っているよう…。
………し、心臓って。怖い事いわないでよねぇ。
そんな事を思いながらも、隼人と肩を並べて、暗いお化け屋敷へと入っていった…。
「キャー」
一歩踏み込めば、そこはこの世のものとは思えぬ所。
ただでさえ寒いのに、体中を悪寒が走って、ブルブルと震えてしまうほどだった。
聞こえてくるのはお化けの呻き声みたいなのやら、前の人の悲鳴やら………。
お化け屋敷が好きと言っても、ここはちょっと苦手かも…。
並んでいるときから繋いでいた手に、汗をかいてきてしまった。
しかもさっきから、繋いだ手が痛い。
隼人はきっと私が怖くないようにと握ってくれているんだ……。
そんな優しさに、一瞬怖いのも忘れて心が温かくなるのを感じた。