キャラメルに恋して


「2名様でよろしいてすね?」

表情一つ崩さずに、笑いもしないで私達を見ている野口さ……、じゃなくて座敷わらしさん。


「はいっ!」

「はい……」


ワクワクが止まらなくて、ちょっと恥ずかしくなるくらい元気に返事をした私とは違い、小さな声の隼人。


「では、心臓に気を付けてー」


そういって、座敷わらしさんは口角を少しあげた。

どうやら一応笑っているよう…。


………し、心臓って。怖い事いわないでよねぇ。



そんな事を思いながらも、隼人と肩を並べて、暗いお化け屋敷へと入っていった…。


「キャー」


一歩踏み込めば、そこはこの世のものとは思えぬ所。

ただでさえ寒いのに、体中を悪寒が走って、ブルブルと震えてしまうほどだった。


聞こえてくるのはお化けの呻き声みたいなのやら、前の人の悲鳴やら………。

お化け屋敷が好きと言っても、ここはちょっと苦手かも…。


並んでいるときから繋いでいた手に、汗をかいてきてしまった。


しかもさっきから、繋いだ手が痛い。


隼人はきっと私が怖くないようにと握ってくれているんだ……。

そんな優しさに、一瞬怖いのも忘れて心が温かくなるのを感じた。




< 75 / 358 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop