ゆーとゆーま
朝の習慣
 最近の由布の口ぐせは、起きろゆーま、だ。
 多少なり違う点があろうとも言いたいところは同じ。要するに、ゆーまの寝起きが悪すぎるってこと。

 由布が自宅を出るのは七時半、学校に行く前に隣家へ寄って遅刻するぎりぎりのラインまでそこで過ごし、一向に起きてこないゆーまに声をかけたり肩をゆさぶったり馬乗りになってみたりして、いつも最後には諦めて隣家を出る。

 ずっとこのパターンだから、寝ぼすけゆーまが授業の単位を取り損なって留年する日も近い、と由布は誰にも言わないが、思っている。

 新学期が始まったばかりの今は四月。せめて夏になる前にこれが治れば良いのだけれども。……本人、およびゆーまの家族が言うには望みは薄い。


 玄関のドアは容易く開き、朝ごはんのいい匂いが流れてきて由布のお腹をくすぐる。もちろん自宅でごはんは食べてるけど、それとこれとはまた別。特に、和食派のおじさんのためだけにおばさんが作る卵焼きは絶品。

 くるくる楕円の形に巻かれたきいろい卵焼きは真ん中がおじさんの朝食とお弁当になるので、余った端の方はたいてい、由布が頂いちゃう。ゆーまも卵焼き好きだって? 起きてこないのが悪いんだよ。

 ダイニングを通過して、由布ちゃん卵焼きそこにあるよー、と言われた分をありがたく口に放り込み、階段を上って二階へ。
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