キスより甘くささやいて
休日の月曜日。
颯太が新作のケーキについて考えている。
私は実家に行って来ると言って、家を出る。
颯太は「ゆっくりしておいで。」と送り出してからくれた。
心が痛む。

私はgâteauに向かう。
オーナーと待ち合わせをしているからだ。
オーナーは休日のgâteauの扉を開け、
「颯太に内緒で、相談っていうのは物騒だな。」と笑う。
私とオーナーはティールームに向き合って座ると、
決心して、手紙を取り出す。
「颯太に毎月届くフランスからの手紙です。
私は内容が知りたい。オーナー、フランス語わかりますか?」と一息に言った。オーナーは驚く。
「美咲ちゃん、どうしたの?
それ、勝手に持ち出したの?僕は協力できないよ。」と私を呆れたように見つめる。
「そう言われるとわかっていました。
でも、その手紙は颯太がフランスの修行時代の先輩からの手紙です。
毎月届いているようだけど、
颯太はサッと読んで、返事も書かずに机の上に積み上げているだけです。
私はこの手紙は颯太にとって、大切で、でも、返事の書けない手紙だと思っています。
私はどうしても内容が知りたい。」と真剣な顔で、オーナーに訴えた。
オーナーは大きく溜息をついて、
「…美咲ちゃんは、僕にも内容を知って欲しいんだね。
きっと、パティシエとしての颯太に来ている手紙だと思ってるってことか…」と言って、
「このことで、颯太と喧嘩になってもいいの?
別れる事にになっても?
颯太を傷つけても?
颯太は君と一生一緒にいたいって言ってたよ。
それでも、その手紙を読むの?」と怖い顔だ。
私は
「何度も考えました。それでも、知りたいと思っています。」
と静かにオーナーを見つめた。
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