キスより甘くささやいて
店員が全員揃って、オーナーが入れてくれたコーヒーを飲む。
明日から3日間、gâteauはお休み。
とオーナーが決めている。
年末年始にお正月用にケーキや、焼き菓子を買い求めるお客様が多いので、
お休みは無しだからだ。
みんなのの前で、オーナーは口を開く。
「みんなに、話があるんだ。
来年の3月いっぱいでgâteauを閉めようと思う。」と静かに言った。
「突然で、申し訳ない。
僕の家は代々続いてる輸入食品の会社をやってるんだよ。
僕の兄が仕事を継いでいるんだけど、新しい事業の取りまとめをずっと頼まれててね。
断りきれなくなったんだよ。」と言った。
そうきたか。
gâteauを閉めるなんて、思ってもいなかったな。と私は心の中で、呟く。オーナーは
「颯太、申し訳ないけど、そういうことだから、次の仕事先を探して欲しい。
颯太の腕なら何処でも働けるよ。
みんなにも迷惑をかけるけど、みんなの就職先は僕も考えているから、個別に話し合おう。
もちろん、ボーナスも退職金も出すよ。」と笑った。
そんな事、急に言われても…とティールームに勤める2人は唖然としていたが、
颯太は静かに受け止めているようだ。
これで、颯太をここに繋ぎ止めている糸が1本切れたって事だ。
私も、私自身に颯太を繋ぎ止めている糸を切る準備は出来ている。
オーナーが私に笑いかける。
これでいいでしょう。と目が笑っているようだ
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