キスより甘くささやいて
帰り道、車を運転しながら、颯太は大きく溜息をつく。
「gâteauがなくなるなんて、考えてなかったな。どうする?美咲。」
と私の顔を見る。私は
「ちょっと、海が見たいから、七里ガ浜の駅前の駐車場に停めて。」と返事をする。
颯太は怪訝な顔をしながらも、ハンドルを切って、駅の方角に向かう。
「美咲、暗いから、海なんか見えないけど…」と呟くけど、私は
「いいの」と返事をした。
颯太は黙り込む。
きっと、家に戻らない私の何か感じているんだろう。
駅前に駐車場に止まっている車はいない。
真っ暗な寒い冬の海に用事がある人なんかいないんだろう。

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