キスより甘くささやいて
フランスに発つ前日。
私達は荷物をまとめ、海沿いのホテルに泊まることにした。
颯太の家は借り手が決まり、
業者さんにベットだけは処分してもらい、
ハウスクリーニングをしてから、貸し出される予定だ。
ホテルにチェックインしてから、海岸に続く階段を降りる。
いい天気だ。
風が暖かい。
階段の途中に座り、颯太は私を膝の間に座らせ後ろから抱きしめながら、波の音を聞く。
多分、もう、話すことはないんだろう。黙ったままだ。
日が暮れるまで、海を見てから、ホテルで食事をして、部屋に入る。
そのままベットに連れて行かれた。
長い夜の始まりだ。
颯太は何度も私を求めてくる。
私も颯太の熱い手を握り返す。
お互い耳元で、何度も愛してると繰り返し、浅い眠りつく。
明日チェックアウトした後、颯太はそのまま、空港に行く予定だ。

颯太が疲れ切って、寝息を立てている短いすきに
私は、ワンピースだけ身につけ、小さなバッグを持つ。

テーブルの上にエンゲージリングを乗せ、
私のことは忘れてください。とメモを残し、
部屋を滑り出る。

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