キスより甘くささやいて
トオルに抱きついて、子どもみたいに泣きじゃくる。
「…赤ちゃん出来てなかった。」
と嗚咽してしまった。
「あんた、颯太の子供のことでしょうね。」とトオルは確認する。
私は何度も頷き、涙が止まらない。

シルビアママは奥のソファー席に私を連れて行く。
私の泣き声が収まる頃、哲也君がホットミルクを持ってきてくれた。
両手で持ったマグカップが温かい。シルビアママは
「で?颯太って避妊しない男だったの?」と笑う。
私は横に首を振る。
そうじゃないんだけど、
「別れる前の1ヶ月位、颯太、結構、めちゃくちゃだったから。
続けて何度も私を抱いたし、
結構、倒れるように眠ったから。
妊娠してもおかしくなかった。と思う。」とため息をついて、
「だからね、生理がなくなって、もしかしたらって思ったら、
すごくうれしくなっちゃって。期待した。
颯太と、もう、会うことはなくても、私には子供がいる。って思っちゃった。
馬鹿ね。
…病院に行ったら、単に生理が止まっただけだった。」と苦笑いをした。
「そりゃあ、残念だったわね。美咲、
颯太の子どもが欲しいくらい颯太が好きなのに、
なんで、最後になって、逃げ出したの?」と聞かれて、
「颯太を自由にしてあげたかったの。ただ、それだけ。」
と、シルビアママをじっとみつめた、
「颯太を愛してるんでしょう?」と聞かれ、
「愛してるわ。」と呟いた。
< 126 / 146 >

この作品をシェア

pagetop