キスより甘くささやいて

再び、BAR山猫

颯太がフランスに発って3ヶ月が経った。
私の身体に刻まれていた颯太の印はもう消えてしまった。
鏡に映る自分の身体を見る度に颯太を思い出して、苦しかったけど、
もう平気だ。
あの後、風邪を引いて、体調を崩したけど、
少し痩せたくらいで仕事を始めることができた安心した。

私は大丈夫。

と思っていたけど、今日はひとりで居たくない。
七里ガ浜の海沿いのホテルを取って、夕方チェックインする。
いつもの海に降りていく階段の途中で暗くなるまで、ぼんやり海を見てから、
山猫に向かった。

ここに来るのは3ヶ月ぶりだ。
そっと、扉を開けると、
深紅のチャイナドレスに身を包んだ、シルビアママと目が合った。
相変わらずお美しいです。と思うと、
「美咲、あんた、相変わらず女子力低いんじゃないの?」
と大げさにため息をついて、心配したわよ。とちょっと笑った。
私は涙がこぼれ落ちる。



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