キスより甘くささやいて
私は驚いて、
「えーっ?
私はてっきり、お母さんが作った物だと思って、食べてました。」と言うと、
「高校生の男はフツーお菓子作りはしないだろ。
気持ち悪がられるのが嫌だったんだよ。」と顔を真っ赤にして、言い訳する。
「でも、今の颯太のケーキはすっごく美味しいです。
(2種類しかたべてないけど)うーん、
もしかしたら、私が一生懸命食べてたおかげで、
今の人気急上昇パティシエがいるんじゃないのかな?」と私がからかうと、
「そうかもな」と真面目に颯太が返すので、
私は慌てて、
「颯太、いっつもみたいに眉間にしわを寄せて、
フザケルナっていうところなんですけど〜」と私が突っ込むと、
お母さんが声を立てて笑い、
「そうなのよ。
颯太ったら、すっごく眉間にシワが寄るのよねえ。
私もそう思ってた。」と面白そうに言った。
そうだ、
「桜貝。今日海辺で拾ってきたんですよ。」
とお母さんの手のひらに乗せると、
「綺麗ねえ。海の匂いがする。」
と嬉しそうに笑って、大切そうに貝殻を撫でた。
その後は子供の頃の私や颯太の海辺での失敗の話をたくさん話して、笑いあった。
「さて、」と私は話を切り上げる。
あまり長く居ても疲れちゃうんだろう。
また、来ます。と、言うと
「今日は颯太の大切なひとに会えてよかった。」
と言ってくれたんだけど、颯太は
「変なプレッシャーはよせ。俺が振られるだろう」
と言って、お母さんを笑わせた。
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