能あるイケメンは羽目を外す
「負けるもんか」

自分に言い聞かせるように小さく呟くと、PCの電源を入れ机の上に乗せられた書類を整理する。

タクシー利用申請書、接待申込書、旅費精算書……。

種類別に書類をクリップで纏めると、私は三十件近く来ていたメールを処理し始めた。

メールの処理が終わると、机の上に置いてあった書類を一枚一枚確認して添付書類と押印漏れがないか確認していく。

申請書の中に【片桐章介】という名前を見つけチクンと胸が痛んだ。

彼はどんな思いでこの書類を出したのだろう。

金曜日……私が仕事を終わらせた後私の机まで来て……もうその時には彼の心は決まっていたのだろうか?

片桐章介というのは、私の婚約者だった人の名前だ。

結婚できないってメールを受け取ってから、彼からは電話もメールもない。

私達は……もう終わった。ううん、始まってもいなかったのかもしれない。私だけがはしゃいでて……、彼の事なんか全然見えていなかった。
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