Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「…大丈夫ですか?」


 居間の方から台所を覗き込み、心配そうに遼太郎が声をかける。


「うん。割れてないから、大丈夫。手が滑っちゃった…。」


 そう言いながら、みのりは振り向くことはできなかった。


――…泣いちゃダメ!今日は絶対に、泣いちゃダメよ…!!


 必死で自分にそう言い聞かせて、涙を堪える。

 あと1時間半しか、一緒にいられない…。その現実が重くのしかかってくる。

 本当ならば、この前の遊園地の時のように、遼太郎の胸の中に飛び込んで、抱きしめられたい。
 遼太郎の腕に包み込まれて、あの安堵感の中で残りわずかな時間を過ごしたいと思った。

 遼太郎の情熱に身を任せて、すべてを捧げたいと思っているのは、みのりも同じだった。


 けれども、そうしてしまうと、みのりは自分が抑えられなくなってしまうと自覚していた。
 遼太郎の側にいるためにすべてを投げ出して、東京へ遼太郎を追って行ってしまうだろう…。


 皿を洗い終わったみのりは、笑顔という仮面をかぶった。


 抱きしめられることが叶わないなら、せめて残りの時間は楽しく――、笑い合って過ごしたかった。


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