Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
一人取り残されて、言いようのない動揺が遼太郎に襲い掛かってくる。
みのりは自分のことを好きでいてくれているはずだ。それに、男と深い関係になるのも初めてではないはずだ。
それなのに、どうして拒んだりするのだろう…。
――時間がないからかもしれない…。
素直で健気な遼太郎は、そう思うことにした。でも、もしそうだったら、あまりみのりを待たせるわけにはいかない。
満たされなかった欲望と心に過った不安を、深呼吸して落ち着ける。
そして、ようやく遼太郎がドアを開けると、みのりはアパートの通路の手すりに身を預けて、側を流れる川の遠い上流を眺めていた。
「…時間がないのに、すいません。」
背後から遼太郎が声をかけると、みのりは振り向いて、何もなかったかのように薄く笑みを浮かべた。
手にあった鍵でドアを施錠し、階段の方へと歩きはじめる。遼太郎はみのりの動きをただ黙って見守り、溜息を一つ吐いてからみのりの後に続いた。
遼太郎が自転車置き場から自転車を出すのを、みのりは側でたたずんで待ち、アパートから数百メートル離れた橋の方へと向かって、二人で並んで歩きはじめる。