Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「まぁ、遼太郎…。そんなに落ち込むな。大学行けば、すごく面白いことがたくさんあるし。今の辛さも少しは和らぐと思うし。」
そう言って姉は肩をたたいて慰めてくれ、自分のアパートへと帰って行った。
母親はその晩は遼太郎のアパートに泊まったが、別段姉が気にしていたことには触れようとせず、淡々と接してくれた。
次の日、母親は遼太郎と一緒に日用品の量販店に行き、調理道具や掃除用具などの家庭用品を一通り買い揃えてくれた。大荷物を抱えアパートまで戻り、それから二人で近所の蕎麦屋で昼食をとった。
そして、飛行機の時間が迫ってきたので、母親はそのままアパートへは戻らず帰ることになった。アパートから歩いて10分余りの駅まで、遼太郎は母親を送って行った。
ついこの前までは、どちらかというとうっとうしかった母親なのに、その母親が帰ってしまうとなると、漠然とした不安が濃くなってくる。側に誰もいなくなると、どうやって精神の均衡を図ればいいのか、不安でしょうがなかった。
「それじゃ、ね。何か困ったことがあったら、連絡するのよ。戸締りと火の元だけには気を付けてね。初めは心細いだろうけど、大丈夫。…頑張って。」