Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
気付いたら膝を抱えて、声を押し殺して泣いていた。
自分でも、どうすればいいのか分からない。
この感情の処理の仕方を。
自分の人生の処し方を――。
きっと喜美代は、みのりのこの状態を見透かしている。こんなに不安定で危なっかしいのだから、母親に心配されて当然なのだ。
「また、母さんとやり合ったのか…?」
顔を上げなくても、父親の隆生《りゅうしょう》だということは、すぐに分かった。
みのりは顔を伏せたまま涙を拭って、泣いていたことをごまかしてから、頭をもたげた。
「…うん。いつものことでね…。」
隆生は深い溜息を吐きながら、みのりと並ぶように縁側に腰かけた。
庭仕事をしていたらしく、いつもの作務衣《さむえ》姿の足元には地下足袋を履いている。この見事な日本庭園は、隆生の手入れの賜物だった。
「今度のお見合いの相手は、前にも写真を見せただろう?町長の息子さんだよ。ずいぶん以前にお前の見合い写真を渡しておいたら、先日になってあちらから『是非に』という話があって…。」
隆生は、喜美代がしてくれなかった事のいきさつを説明してくれた。
「……あんな、昔の写真……。今の私を見たら、きっとガッカリするんだから…。」
先方に渡っている写真は、みのりが大学院を修了した24歳の時のものだ。