Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
だったら、なおさら疑問に感じてしまう。なぜ、お見合いをしようと思ったのか…。みのりの実家の方は、蓮見の家にかけるような圧力など持ち合わせていないので、みのりが感じたような義理のようなものもないはずだ。
「その女性とは、結婚を考えていなかったのですか…?」
20代後半で生活基盤もしっかりしていれば、結婚を考えてもおかしくない。駐車場の柵にもたれて海の方を眺める蓮見に、みのりは当然の疑問をぶつけた。
みのりのこの質問に、蓮見は肩をすくめて溜息を吐く。
「付き合っている時は、このまま行けばその内そういうことにもなるだろう…とも思っていたんですが……。」
蓮見はそこで言葉を切って、唇を舐めて言いよどんだ。そして、思い切ったように体の向きを変えて、視線をみのりへと向ける。
「それが、みのりさんの写真を見て、とても会ってみたくなったんです。釣書を見ても、みのりさんにとても興味を感じました。大学院にまで行って学問をした女性って、どんな人だろう。高校の日本史の教員試験で、100人近くの中から合格する1人か2人になる人って、どんな人だろう…って。一旦そう思い始めると、目の前にいる自分の彼女がとても平凡に感じてしまったというか、もう何も感じなくなったというか……。それで、彼女に納得してもらって別れられたのが、去年の暮でした。」