Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
今、遼太郎に会うわけにはいかない。
それは、自分の道を歩み始めた遼太郎の心を、揺らしてしまうからではなく、みのり自身の理性が揺らいでしまうからだ。
会えば自分を抑えきれず、きっとあの時の別れを選んだ決心など吹き飛んでしまう。
今の遼太郎の状況や気持ちなどは関係なく、その胸に飛び込んで泣きじゃくり、あの時のキスの続きを求めてしまうだろう。……そんな、自分のことしか考えていない、ただの愚かな女にはなりたくなかった。
みのりは熱気が充満した車に乗り込むと、息が整うのも待たずにハンドルを握り、逃げるように学校を後にした。
遼太郎と二俣が、3年部にあるみのりの机を捜し当てた時には、すでにそこには誰もいなかった。
「あれ?みのりちゃんは?さっき古庄先生は『いるはずだ』って言ってたのに…。」
二俣は長身の体でさらに背伸びをして、職員室中を眺め回した。
「仲松先生なら、つい今バッグを抱えて出ていったよ。帰宅したんじゃないか?」
そう言って教えてくれたのは、昨年遼太郎に地学を教えてくれていた理科の教師だ。
みのりの机の上には、走り書きしたメモが残されていた。