Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「よし、サポートに来い!」

 次に待っている子どもに促すと、その子は走り寄ってきて、遼太郎と押し合いをしている子からパスを受け、遼太郎の背後に引かれている仮想のゴールラインの向こうにトライを決めた。


「よし!じゃあ、次!!」


と言って、並んでいる子どもに向き直ると、次の子はまだ幼稚園生みたいだ。小さな体にちゃんとラグビージャージを着て、大きなヘッドキャップをかぶっているのが、何とも可愛らしい。
 それでも一生懸命にぶつかってくるので、遼太郎がちょっと押し返してやると、コロンと仰向けに転がってしまった。


「ほら、サポートに来ないとオーバーされるぞ!」


 思わず湧いて出てくる笑いを堪えつつ、次の子にそう指示すると、次の子は地面に落ちているボールを拾って走り、トライをする。


――こんな風に、自分の子どもと一緒にラグビーをするのも楽しいだろうな……。


 まだ想像もつかない自分の未来だったが、子どもたちの様子を見ながら、遼太郎は漠然とそんなことを思った。


 けれども、その遼太郎の子どもを傍らで見守っている母親は……、彩恵ではない。
 優しい眼差しで微笑みを湛えてくれている。遼太郎の感覚の中でそんな表情が出来るのは……、みのりだけだ。

 自分の今の境遇と、自分の本心との間にある矛盾に気が付いて、遼太郎の心に影が差す。


< 270 / 775 >

この作品をシェア

pagetop