Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「高校の時は、はじめはセンター、それからスタンドオフをやってました。」

「おおぉ!スタンドオフ!!かっけー!!」


 遼太郎が答えると、子どもたちの顔が一斉に輝く。


「お!俺も、スタンドオフ!番号だけ。」


と、一人の男の子は背中を向けて、「10」の背番号を見せてくれた。遼太郎の周りの子どもたちから、一斉に笑いが起こる。


 子どもたちは遼太郎を囲んで、ひとしきり盛り上がったが、貴重な練習場所を確保できた貴重な時間だから、あまりゆっくり話をしてもいられない。それからほどなくして、練習が再開された。


 遼太郎は先ほどと同じく、しばらく練習風景を眺めていた。
 小学生の練習なので、高校生のそれのように、生徒たちがお互いに練習の相手になるということが難しく、案の定コーチの手が足りなくなる。

 遼太郎は見るに見かねて、コンタクトバッグを持って、ボールを持ってぶつかってくる子どもを受け止める役を買って出た。

 相手が小学生なので、どのくらいの力で押し返せばいいのか戸惑いもあったが、体の大きな高学年の子のぶつかってくる衝撃の強さに驚いた。


「うん、当たりはいいけど、試合の時は相手も必死で押してくるぞ。」


と、遼太郎も足を踏ん張って少しだけ押し返す。すると、子どもの方も必死で押してくる。


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